(感想)
・学校で習う日本史とは、歴史上の人物や、書物の名称をただひたすら覚えるものです。「山家学生式は最澄」、「正法眼蔵は道元」、「金槐和歌集は源実朝」などと。しかしその肝心の中身にはいつ向き合うのか。そんな疑問は私も長年持っていました。この本の著者である阿部氏は高校日本史の元教師とのこと。なんと、先生は、授業で登場するすべての書物の始めから終わりまでを通読できていないと、と正直に告白なさっています。確かに源氏物語ひとつをとっても、簡単に読み通せるものではないですね。そして、せめてもの良心として「よく知りもしないで、如何にも知っているかのように話したくはない。授業で教える以上は、少しは読んで内容を理解しておかねば。」という姿勢で、この本をとりまとめられたとのことです。その職業魂が素敵だなと思います。
・著者は「自身はあくまで元高校教師で学者や研究者ではないから」と謙虚な記しぶりながら、この本で取り扱っている日本史の原著は100冊を優に超えています。博覧強記ですね。
・名場面の内容も、興味深いくだりを多数押さえて下さっているように思います。
・昨今は、ビッグデータを食べ続ける生成AIが存在感を増す時代ですが、人間そのものの魂を磨くには、物知りAIの知力に頼るだけではだめで、やはりこういった本を地道に読書していくより他ない、そんな気持ちになりました。
寄稿:書斎本舗 2026.5.10